技術基準:J60065(AV機器) 絶縁構造
家庭用機器 
(IEC-J60335-1)

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情報機器
(IEC-J60950-1)

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AV機器
(IEC-J60065)

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はじめに

   ここでは、絶縁構造の要求事項について、次の分類で説明します。
     1.一般的な要求事項
     2.絶縁物に関する要求事項
     3.空間距離・沿面距離に関する基本要求事項

一般的な要求事項

A.絶縁クラスの要求事項
   
【適用規格】JIS C6065:2019 3.2項
1.機器は、クラスⅠ機器クラス0Ⅰ機器⼜はクラスⅡ機器の要求事項に従った構造であること。

2.次の機器はクラスⅡ機器の絶縁構造であることが望ましい。
   ・頻繁に移動させて⽤いる機器
   ・明らかに接地接続が困難な状況で設置される機器。但し、サービスマン等が設置する機器を除く。


B.空間・沿面距離の測定条件
   【適用規格】JIS C6065:2019 13.3.1項、13.4項
1.可動部品は、最も厳しくなる位置に置く。

2.スピーカのボイスコイルと隣接する導電部分間の空間距離は無いものとみなす。

3.エンクロージャのスロット・開⼝部を通して絶縁材料のエンクロージャからの空間距離を測定する場合、
  JIS C 0922規定の検査プローブB(関節付きテストフィンガ)で、ほとんど⼒を加えず触れることができる部分は、
  全て⾦属箔で覆われ導電性があるとみなす(図3のB点参照)

4.空間距離のみ適用
  測定中、内部部品の任意の箇所、導電性エンクロージャ外側に空間距離が狭くなるようにエンクロージャに、
  JIS C 0922規定の検査プローブ11(関節なしテストフィンガ)で次の⼒を加える。
     ・内部部品:2N
     ・エンクロージャ:30N

絶縁物

A.絶縁物の厚み
 
  【適用規格】JIS C6065:2019 8.8項、8.9項
1.絶縁物の厚みは、次を満足すること。
 (1)⼆重絶縁は、基礎絶縁⼜は付加絶縁のいずれかは0.4mm以上あること。
 (2)強化絶縁は、0.4mm以上あること。

2.内部配線に使用する電線類の厚みは、次を満足すること。
  (1)塩化ビニル製は、0.4mm以上あること
  (2)その他の材料は、10.4項規定の耐電圧試験に適合し、同等の機械的強度を確保する厚さがあること。
     (例)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)絶縁は、0.24mm以上あること


B.絶縁物で充填処理している部分
   【適用規格】JIS C6065:2019 13.8項
1.全空間を絶縁物で充塡処理してある機器、部分組⽴品⼜は部品内部の導電部間は、次のとおりとする。
  ・空間沿⾯距離が存在しないため、8.8項(絶縁物の厚み)規定を適⽤する。
    (例)ポッティング、カプセル封⼊及び真空含浸を含む。
  ・カプセル封⼊材、注⼊材その他の材料にクラックがないこと、
  ・コーティングが緩んだり縮んだりしないこと
  ・サンプルを断⾯が分かるように切ったときに材料中に顕著な気泡がないこと


空間距離・沿面距離の基本要求事項

A.主電源に導電的に接続した回路の空間距離
    【適用規格】JIS C6065:2019 13.3.2項
1.要求事項
 (1)次の表規定の最小寸法に適合すること
     表:主電源に導電的に接続した回路間及びこのような回路と主電源に導電的に接続していない回路との間の絶縁に
       対する最⼩空間距離
     表:公称交流主電源電圧のピーク値を超えるピーク動作電圧をもつ主電源に導電的に接続した回路の絶縁
       及びそのような回路と主電源に導電的に接続していない回路との間の絶縁に対する加算空間距離

表 最小空間距離
  主電源に導電的に接続した回路間及びこのような回路と主電源に導電的に接続していない回路との間の絶縁に対する最⼩空間距離

  (抜粋)
動作電圧(以下) 公称交流主電源電圧150V以下
(主電源過渡電圧1500V)
公称交流主電源電圧150Vを超え300V以下
(主電源過渡電圧2500V)
公称交流主電源電圧300Vを超え600V以下
(主電源過渡電圧4000V)
交流(ピーク)
又は
直流(V)
実効値
(正弦波)
(V)
汚損度1及び2 汚損度3 汚損度1、2及び3 汚損度1、2及び3
B及びS B及びS R B及びS R B及びS R
210 150 1.0
(0.5)
2.0
(1.0)
1.3
(0.8)
2.6 
(1.6)
2.0
(1.5)
4.0
(3.0)
3.2
(3.0)
6.4
(6.0)
420 300 B、S:2.0 (1.5)  R:4.0(3.0) 3.2
(3.0)
6.4
(6.0)
840 600 B、S:3.2(3.0) R:6.4(6.0)
1400 1000 B、S:4.2 R:6.4
2800 2000 B、S、R:8.4
7000 5000 B、S、R:17.5
9800 7000 B、S、R:25




















        *基礎絶縁(B)、付加絶縁(S)及び強化絶縁(R)に適用する。
     *括弧内の値は、製造工程が品質管理プログラム(附属書M参照)に基づく場合だけ、基礎絶縁(B)、
      付加絶縁(S)及び強化絶縁(R)に適用する。
      特に、二重絶縁及び強化絶縁には、ルーチン試験の耐電圧試験を行う。
     *交流(ピーク)又は直流420~42,000Vの動作電圧に対しては、
        ・近接する2点間:直線内挿法
        ・交流(ピーク)又は直流42000Vを超える動作電圧:外挿法
      を適用する。算出した距離は、0.1mm単位で切り上げる。
     *汚損度

表:加算空間距離 
    公称交流主電源電圧のピーク値を超えるピーク動作電圧をもつ主電源に導電的に接続した回路の絶縁
    及びそのような回路と主電源に導電的に接続していない回路との間の絶縁に対する加算空間距離
公称交流主電源電圧
150V以下
公称交流主電源電圧
150Vを超え300V以下
加算空間距離
(mm)
汚損度1、2
最大動作電圧V(ピーク)
汚損度3
最大動作電圧V(ピーク)
汚損度1、2、3
最大操作電圧V(ピーク)
基礎絶縁
付加絶縁
強化絶縁
210 (210) 210 (210) 420 (420)
298 (298) 294 (293) 493 (497) 0.1 0.2
386 (366) 379 (376) 567 (575) 0.2 0.4
474 (444) 463 (459) 640 (652) 0.3 0.6
562 (522) 547 (541) 713 (729) 0.4 0.8
650 (600) 632 (624) 787 (807) 0.5 1.0
738 (756) 715 (707) 860 (884) 0.6 1.2
826 (756) 800 (790) 933 (961) 0.7 1.4
914 (839) 1006 (1039) 0.8 1.6
1002 (912) 1080 (1116) 0.9 1.8
1090 (990) 1153 (1193) 1.0 2.0
1226 (1271) 1.1 2.2
1300 (1348) 1.2 2.4
ー    (1425) 1.3 2.6
























       *括弧内の値は、表:最小空間距離記載の品質管理プログラムに基づいて用いるときに適用する。
       *この表に示す値を超える動作電圧に対しては、直線外挿法を適用する。
       *近接する2点間には直線内挿法を適用する。算出した距離は、0.1mm単位に切り上げる。

2.測定条件
 (1)JIS C 60664-1規定の過電圧カテゴリⅡを超える過渡電圧を受けない機器に適⽤する
 (2)該当する主電源過渡電圧は、各公称交流主電源電圧欄の括弧の中に⽰す。
 (3)動作電圧は、公称交流動作電圧電圧に等しいとみなす。但し、次の場合を考慮する。
    ・直流電圧に重畳するリップルのピーク値が、規定の許容値を超える場合、リップルのピーク値を含める。
    ・繰返しがない過渡電圧(例:周辺の⼤気のじょう乱によるもの)は、考慮しない。
     主電源に導電的に接続していない回路の繰返しがない過渡電圧は、主電源に導電的に接続した回路の主電源過渡電圧
     以下とする
    ・危険な活電部でない回路⼜はTNV回路(呼出信号電圧を含む)での電圧は、ゼロとみなす。
    ・ピーク動作電圧が公称交流主電源電圧を超える場合、表:加算距離では最⼤ピーク動作電圧を⽤いる。

3.必要空間距離の求め方
 (1)公称交流主電源電圧及び汚損度に対する表:最小空間距離の該当する欄を選択する。
 (2)動作電圧が交流主電源電圧に等しい適切な列を選択し、最⼩の要求値を記録する。
 (3)表:加算距離で、公称交流主電源電圧及び汚損度に対して該当する欄を選択し、その欄から実際のピーク動作電圧
    該当する列を選択する
 (4)表:加算距離の右側⼆つの欄の⼀⽅から加算空間距離を読み、この値に、表:最小空間距離の規定で得た最⼩空間距離
    を加えて算出する。

4.300V以下の公称交流主電源電圧で動作する主電源に導電的に接続した回路で、その回路のピーク動作電圧
  公称交流主電源電圧のピーク値を超える場合、最⼩空間距離は次の⼆つの値の合計とする。
   ・公称交流主電源電圧に等しい動作電圧に対する表:最小空間距離規定の最⼩空間距離
   ・表:加算距離規定の適切な加算空間距離



B.主電源に導電的に接続していない回路の空間距離
   【適用規格】JIS C6065:2019 13.3.3項
1.要求事項
 (1)表:主電源に導電的に接続していない回路の最⼩空間距離の最⼩⼨法に適合すること。

表 主電源に導電的に接続していない回路の最⼩空間距離(抜粋)
動作電圧(以下) 公称交流主電源電圧
150V以下
(主電源に導電的に接続していない回路の過渡電圧定格800V)
公称交流主電源電圧
150Vを超え300V以下
(主電源に導電的に接続していない回路の過渡電圧定格1500V)
公称交流主電源電圧
300Vを超え600V以下
(主電源に導電的に接続していない回路の過渡電圧定格2500V)
過渡電圧を
受けない回路
交流
(ピーク)
又は直流V
実効値
正弦波
V
汚損度1、2 汚損度3 汚損度1、2 汚損度3 汚損度1、2、3 汚損度
1、2だけ
B、S R B、S R B、S R B、S R B、S R B、S R
71 50 0.7
(0.2)
1.4
(0.4)
1.3
(0.8)
2.6
(1.6)
1.0
(0.5)
2.0
(1.0)
1.3
(0.8)
2.6
(1.6)
2.0
(1.5)
4.0
(3.0)
.0.4
(0.2)
0.8
(0.4)
140 100 0.7
(0.2)
1.4
(0.4)
1.3
(0.8)
2.6
(1.6)
1.0
(0.5)
2.0
(1.0)
1.3
(0.8)
2.6
(1.6)
2.0
(1.5)
4.0
(3.0)
0.7
(0.2)
1.4
(0.4)
210 150 0.9
(0.2)
1.8
(0.4)
1.3
(0.8)
2.6
(1.6)
1.0
(0.5)
2.0
(1.0)
1.3
(0.8)
2.6
(1.6)
2.0
(1.5)
4.0
(3.0)
0.7
(0.2)
1.4
(0.4)
280 200 B、S:1.4 (0.8)  R:2.8 (1.6) 2.0
(1.5)
4.0
(3.0)
1.1
(0.2)
2.2
(0.4)
420 300 B、S:1.9 (1.0)  R:3.8 (2.0) 2.0
(1.5)
4.0
(3.0)
1.4
(0.2)
2.8
(0.4)
700 500 B、S:2.5  R:5.0
840 600 B、S:3.2  R:5.0























    *基礎絶縁(B)、付加絶縁(S)及び強化絶縁(R)に適用する。
    *括弧内の値は、製造工程が品質管理プログラム(附属書M参照)に基づく場合だけ、基礎絶縁付加絶縁及び
     強化絶縁に適用する。特に、二重絶縁及び強化絶縁には、ルーチン試験の耐電圧試験を行う。
    *交流(ピーク)又は直流420~42000Vの動作電圧に対しては近接する2点間に直線内挿法を、
     42000Vを超える交流(ピーク)又は直流の動作電圧に対しては直線外挿法を適用する。
     算出した距離は、 0.1mm単位で切り上げる。
    *空間距離の経路が、材料グループⅠでない材料の表面を部分的に通る場合、空隙部間にだけ耐電圧試験を行う。
    *汚損度
    *より低い過渡電圧に対しては、JISC60664-1の表F.2を用いても良い
     注a) この値は、主電源に導電的に接続していない直流回路で、大地に確実に接続し、リップルのピーク対ピーク値を
        この直流電圧の10%に制限する容量性のフィルタをもつ直流回路に適用できる。
      b) 機器の過渡電圧がこの値を超える場合、更に大きく適切な空間距離を用いなければならない。
      c) 交流1400Vピーク)又は交流1000V(実効値)を超える動作電圧に対しては、空間距離の経路が
        10.4.2規定に従った次のいずれかの条件による耐電圧試験に適合する場合、最小空間距離は5mmとする。
          ・実効値がピーク動作電圧の106%となる交流電圧。
          ・ピーク動作電圧の150%の直流電圧。

 (2)機器内で、接地する可能性があるコネクタ(例:アンテナ⽤、信号⼊⼒⽤)をもつ場合は、表:最小空間距離
    及び表:加算距離を適⽤する。
    但し、保護接地端⼦がある機器の中にある浮いている回路で、次のいずれかに該当する場合は適⽤しない。
      ・浮いている回路を接地した⾦属遮蔽物で、主電源に導電的に接続した回路から分離している場合
      ・過渡電圧が、過電圧カテゴリⅠの最⼤許容値以下の場合、過渡電圧レベルの測定⽅法は、13.3.4の規定による。
        (例)コンデンサのような部品を主電源に導電的に接続していない回路と接地間に挿⼊することで減衰する場合

2.測定条件
 (1)動作電圧は次のとおりとする。。
    ・直流電圧に重畳するリップルのピーク値が規定の許容値を超える場合、リップルのピーク値を含める。
    ・⾮正弦波に対しては、ピーク値を⽤いる。
 (2)主電源過電圧カテゴリがⅡの場合、主電源に導電的に接続していない回路の過電圧カテゴリは通常Ⅰとなる
 (3)ネットワーク線過渡電圧については、次のとおりとする。
    ・既知の場合、その値を⽤いる。
    ・不明の場合は、次の推定過渡電圧を用いる
       ・TNV-2回路: 800V(ピーク)
       ・TNV-1回路 TNV-3回路:1.5kV(ピーク)
    ・侵⼊する過渡電圧が機器内部で減衰することが分かっている場合、13.3.4b)の規定に基づいて決定する



C.沿面距離
   
【適用規格】JIS C6065:2019 13.4項
1.要求事項
 (1)動作電圧汚損度及び材料グループを考慮し、表:最小沿面距離の最⼩値よりも大きいこと

表 最⼩沿⾯距離(抜粋)
動作電圧(以下) 基礎絶縁及び付加絶縁
交流(実効値)又は直流(V) 汚損度1 汚損度2 汚損度3
材料グループⅠ、Ⅱ、Ⅲa、Ⅲb 材料グループ 材料グループ
Ⅲa・Ⅲb Ⅲa・Ⅲb
10 a) 0.4 0.4 0.4 1.0 1.0 1.0
12.5 0.42 0.42 0.42 1.05 1.05 1.05
16 0.45 0.45 0.45 1.1 1.1 1.1
20 0.48 0.48 0.48 1.2 1.2 1.2
25 0.5 0.5 0.5 1.25 1.25 1.25
32 0.53 0.53 0.53 1.3 1.3 1.3
40 0.56 0.8 1.1 1.4 1.6 1.8
50 0.6 0.85 1.2 1.5 1.7 1.9
63 0.63 0.9 1.25 1.6 1.8 2.0
80 0.67 0.9 1.3 1.7 1.9 2.1
100 0.71 1.0 1.4 1.8 2.0 2.2
125 0.75 1.05 1.5 1.9 2.1 2.4
160 0.8 1.1 1.6 2.0 2.2 2.5
200 1.0 1.4 2.0 2.5 2.8 3.2
250 1.25 1.8 2.5 3.2 3.6 4.0
320 1.6 2.2 3.2 4.0 4.5 5.0
400 2.0 2.8 4.0 5.0 5.6 6.3

























     *近接する2点間には直線内挿法を適用する。算出した距離は、0.1mm単位に切り上げる。
     *強化絶縁に対する沿⾯距離の値は、この表の基礎絶縁の値の2倍とする。
      線形補間する場合は、2倍した後に切り上げる。
     *汚損度
     注a) 汚損度1の絶縁に対する最小沿⾯距離は規定しない。最小空間距離は、13.3 又は附属書Jに規定する値を
        適用する。 

2.測定条件
 (1)13.3⼜は附属書J規定の空間距離よりも⼩さい場合、その空間距離の値を最⼩沿⾯距離として適⽤する。
 (2)ガラス、マイカ、セラミック等の材料は、該当する空間距離に等しい最⼩沿⾯距離を⽤いてもよい。
 (3)動作電圧は、次による。
     ・実際の実効値⼜は直流値を⽤いる。
        ・測定器は正弦波波形同様、⾮正弦波波形に対しても、真の実効値が読めるものであること
        ・直流値に重畳するリップルは、全て考慮しない。
     ・短時間の条件(例:TNV回路の断続呼び出し信号)、障害(例:過渡電圧)は考慮しない。
     ・特性が分かっていないネットワーク線に接続したTNV回路動作電圧を決定する場合、通常の動作電圧は、
      次の値とみなす。
        ・TNV-1回路:直流60V
        ・TNV-2回路TNV-3回路:直流120V


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